【Vol.12】事業の柱をいくつも育て、環境変化を乗り越える!~玉川窯業株式会社(多治見市) 中島竹壽さん~
第12回となる『岐阜人(ぎふびと)』は多治見市笠原町から、玉川窯業株式会社の代表取締役 中島竹壽(なかしまたけひさ)さんを紹介します。
多治見市笠原町は、タイル製造の全国シェア8割を占める「タイルのまち」です。
昨年6月には同町に「モザイクタイルミュージアム」がオープン!開業から一年で来場者数15万人を突破する、人気スポットに成長しています。
注)撮影した日(6月26日)は定休日のため閑散としていますが、普段は平日でもた人が訪れているとのこと。
玉川窯業(株)も「タイルのまち」笠原町で、長年にわたってタイル製造を行っています。国道387号線を通ると、同社の看板がドーンと目に入ってきます。
こちらが代表取締役の中島竹壽さん。
昭和49年に先代社長が引退し、22歳の若さで社長に就任。今年で社長業43年目とのこと!!
社長に就任された時代は、まさにオイルショック真っただ中。ご存知の通り、タイルを始めとした陶磁器は”焼き物”と言われるように、多くの燃料を必要とします。
社長になって早々に「燃料代高騰」というピンチを迎えた中島さんは、省エネ設備を導入するため、設立以来初めて金融機関から借り入れを行う決断をします。
「当時は先が見えない中で借金を背負い、とても苦しかった。その後姉歯事件やリーマンショックなど何度か経営環境が厳しい時期を迎えたが、この時の経験があったから乗り越えられた」、と中島さんは振り返られます。
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工場内も見学させていただきました。
型押しされ、釉薬を施されたタイルが、工場内に埋め尽くされています。
その隣には、長さ35mにおよぶトンネルキルン(焼成炉)が稼働していました。これでも、業界の中では短い部類に入るとのこと!
ここをゆっくりと通過することで型抜きされたタイルが焼かれ、冷却されることで完成に至ります。
同社の代表的なヒット商品といえば、『カルセラ』。業界で初めてリフォーム用外壁材分野に進出するために開発された製品です。
その名の通り水に浮くほど軽いタイルで、構造体への負担が軽いうえ、運搬・施工の際にも軽くて使いやすい製品となっています。
こちらは、光の陰影が”おりなす”イメージで開発された製品『オリナス』。
2011年にグッドデザイン賞を受賞!
このように、製品ラインナップを充実するとともに、最近ではエンドユーザー向けにネット通販に注力しています。事業の柱をいくつも育てることで、環境変化に耐えうる経営体質づくりを目指しています。
今後も人口減少に伴う建設市場の縮小など、タイル製造業をとりまく環境は厳しいことが予想されます。
そのような中においても企業として生き残るためには、「チャレンジし続けること大切」、 「今が順調でも、将来まで安泰ということはあり得ない。環境の変化に備え、順調な時に新しい種を蒔いておくことで、チャンスに巡り合える。」と中島さんは語ります。
現在すでに、将来に向けた種をいくつか蒔いているとのこと。近い将来、それらの種が芽を出して、花開くことを楽しみにしたいと思います!
↓玉川窯業の公式サイトはこちら!
【Vol.11】ひのき畳ベッドやユニット畳を通じて”ひのきライフ”を提供したい!~飛騨フォレスト株式会社(下呂市)今井康徳さん~
第11回となる『岐阜人(ぎふびと)』は、”ひのきチップ”を活用した畳のベッドや家具を製造販売する、飛騨フォレスト株式会社の今井康徳(いまいやすのり)さん。
同社の製造する畳には、畳床の素材として檜(ひのき)のチップが用いられています。
檜チップを用いた「ひのき畳」は、今井さんのお父さんにあたる先代社長が「地元で生産される東濃檜の間伐材をどうにか活用できないか」と考え、苦労の末に開発に成功した同社独自の製品です。
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しかし畳の需要がどんどんと減少していく中、割高な「ひのき畳」は思うように売れません。先代社長が「ひのき畳」の販売に苦労している中、オーダー家具メーカー勤務を経て帰ってきた今井さんが、家具製造の経験を活かして「畳ベッド」を開発。
これが畳のない居住空間に住む都心部の人たちのニーズにピタッとはまり、インターネット通販を中心に売上を伸ばして行きます。
同社工場の奥には、ショールームが整備されていました。こちらでは、畳ベッドやユニット畳など、様々な「畳家具」を実際に見ることができます。
製造現場も見せていただきました。お客様の要望に応じ、サイズはもちろんのこと、形状や機能など細かな要望に対応しています。
こちらは畳ベットの下に3つの空間を設け、3名分の収納場所を確保!
納品先を聞かせていただいたところ、とある消防署からの注文とのこと。
同社のブログからは、納入先現場の画像を多数見ることが可能です。
下の画像のように、入り組んだ形状であっても対応していただけます!
写真提供:飛騨フォレスト株式会社
多くのお客様は、ベッドなどの家具を注文する際には、やはり実物を確認したいもの!
そこで同社では、数年前から東京や神戸など都心部で一般顧客向けの展示会を開催しています。
今までネット上だけでは購入を躊躇していたお客様の多くが、展示会で実物を見ることで、また実際につくり手と会って話をすることで、安心して購入していただいているとのこと。
さらに、これら展示会で好評であったことが展示会会場の方の目にとまることとなり、今では東京(新宿OZONE)と神戸の芦屋での常設展示が実現しています。
写真提供:飛騨フォレスト株式会社
最近今井さんが力を入れていることは、「もっとヒノキなど木材を身近に感じてもらいたい」、という思いから始まったワークショップの開催です。
首都圏での展示・相談会の開催に合わせ、木製スツールをつくるワークショップも同時開催。3日間の展示会期間のうち、2日目で予定人数に達してしまったほど人気だったそうです。
写真提供:飛騨フォレスト株式会社
今後も、「ひのき畳」を使った家具の製造販売に加え、「ひのきの香りに包まれた健康生活」の提供に向け、様々な取り組みを企画しているということで、楽しみにしたいですね!
↓飛騨フォレスト株式会社の公式サイトはこちら!
【Vol.10】オーダーメイドタイルを通じてタイルを身近に感じてもらいたい!~合同会社プロトビ(瑞浪市)玉川幸枝さん~
第10回目となる『岐阜人(ぎふびと)』は、陶磁器のまち瑞浪市から!
今回紹介するのは、オーダーメイドタイルの企画販売等を手掛ける合同会社プロトビの玉川幸枝(たまがわゆきえ)さんです。
彼女の実家は陶磁器製品の”うわぐすり”である釉薬メーカー、株式会社玉川釉薬(たまがわゆうやく)。同社は平成3年の設立以来、地元のタイルメーカー向け釉薬を日々開発・製造しています。
事務所内には、様々な釉薬で彩られたタイルがありました。
今回は特別に、釉薬がつくられる過程を玉川さんに案内していただきました。
釉薬の原料は大きく分けて二つ。一つは釉薬の色を決定づける顔料です。
工場内には、様々な色の顔料が並べられていました。
これらの顔料を調合することによって、様々な色がつくられます。その組み合わせはまさに無限!
もう一つは鉱物。ネットで調べたところ、「釉薬は長石、石灰、珪石、灰類、酸化銅や酸化鉄等を調合してできていて、ドロっとした液体」になるとのこと。
顔料に加え鉱物も、色や風合いを決定づける重要な要素となります。
量産向け釉薬の調合工程も見せていただきました。ご覧のように、大きなタンクをグルグルと回転させることで、釉薬がつくられます。
タンクに詰められた釉薬が、ところ狭しと敷地に並べられています。
大きいタンクには、なんと600リットルも釉薬が入っています!
玉川さんは大学中退後、実家に戻って6年間勤務していましたが、「ビジネスや組織の仕組みづくりを学びたい」と思い立ち、世界一周旅行や名古屋でのNGOの活動、さらには東京のNPO法人等で、様々な経験を積んで行きます。
それからさらに6年が経過、今こうして地元に戻って来た理由を尋ねると、「外の世界で様々な人と出会うことが、自分自身のルーツを見つめ直すきっかけになった。これまでの経験の中で培った企画力や様々な人のネットワークを、自分の生まれ育った地場のタイル産業のために役立てられないか」と、考えるに至ったとのこと。
その結果、2016年からは東京と瑞浪市の二拠点での活動を始め、ついに今年5月末からは完全に、瑞浪市を拠点とした生活を始めることとなったのです。
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玉川さんが設立し、代表を務める「合同会社プロトビ」で今年1月から始めた事業が、オーダーメイドタイルの開発・製造。新たに「TILE made(タイルメイド)」ブランドを立ち上げ、施工実績を積み上げています。
こちらはセミオーダーによる青色むらタイルを施したキッチン。よく見ると、右下のあたりにオリジナルのロゴが見えます。
写真提供:合同会社プロトビ
こちらのタイルは、商業施設の女子トイレに施されたリボンタイル。
ちょうど頭の高さのところにリボンがあり、「自撮り」するのに最適なデザインしたとのこと!
写真提供:合同会社プロトビ
玉川さんの活動の根幹には、「生まれ育った地元のタイル産業で受け継がれてきた、様々な技術が途絶えないようにしたい」、「そのためには、タイルをもっと身近に感じてもらいたい」という強い思いがあることを、今回お話を聞いて改めて感じました。
玉川さんの活動領域は、単にタイルを企画・製造するだけではありません。地元瑞浪市と連携し、「焼き物産地プロモーション委員会」のメンバーとして『瑞浪オープンファクトリー』イベントの企画・運営にも携わっています。
2016年の『瑞浪オープンファクトリー』パンフレットも見せていただきました。こちらは「女子旅」をイメージしたつくりとなっており、玉川さんの提案が活かされています。
改めて玉川さんの足跡をたどると、一度は実家の家業を手伝いながら、外の世界に飛び出し、また地元に帰って来たわけですが、単に「地元に舞い戻ってきた」というだけではありません。
一つは、外の世界に触れることで、改めて「自分自身のルーツ」をしっかり見つめ直すこととなり、迷うことなく確信を持って今の仕事に取組んでおられます。また、東京など外の世界に触れることで最先端の感性に触れるとともに、様々な業界の人々とのつながりが、地元に戻っての事業展開に活かされていると感じました。
これからも、タイルを「より身近」に感じていただき、産地の技術を次世代につなげるためにも、玉川さんの活動に注目したいと思います!
↓合同会社プロトビの公式サイトはこちら